次のような問題について、考えてみます。
答えは先に出しておきましょう。言葉の意味が大切です。
「時速」とは・・・
1時間あたりに進む道のりのことです。
今、1時間30分で135㎞進みました。
1時間30分が90分だということは、すぐみえます。
また、135が3でわり切れることも、すぐみえるようにしておくことが望ましいです。
(1+3+5=9で、9は3の倍数です。各位の数をたして3の倍数になる数は、その数自体も3の倍数です。)
90分で135㎞進むということは、90分の(3分の1)の30分では、135㎞を3でわった135㎞÷3=「45㎞」進むということです。(下図参照)
時速は1時間(60分)あたりに進む道のりでした。
30分で45㎞なので、60分ではその2つ分で、45+45(45×2)より90・・・
よって、答えは、「時速90㎞」になります。
・・・とはいえ、これで答えが出るのはたまたまですよね。
問題が、考えやすい数値になっています。
もちろん、この考え方も大切ですが、数値が複雑になってくると対応できません。
また、中学に入ると数値の代わりに文字が出てきたりします。
そうなっても、対応できるようにしておきましょう。
結論のようなものに入る前に、考え方の例を示しておきます。
同じ問題で考えましょう。
「1時間30分」で「135㎞」進むペースだということは、それぞれ2倍して、
↓×2 ↓×2
「3時間」で 「270㎞」進むペースだということです。
こうなると、考えやすいです。
3時間で270㎞進みました。
時速とは、1時間あたりに進む道のりなので、270(㎞)を3(時間)でわればよく・・・
270÷3=90より、「時速90㎞」とわかります。
そうなのです。
「速さ」の問題といっても、決してまったく新しい内容というわけではなく、「18個のりんごを3人で分けたら、1人分は何個になりますか?」…という問題の延長なのです。
わり算の重要な使い方の1つです。
わり算は、1つあたりの大きさを求めることができます。
元の問題にもどります。
1時間30分を〔時間〕単位にしてみましょう。
30分は1時間の半分なので小数を使って0.5時間・・・
1時間30分は、「1.5時間」になりますね。
3(時間)でわるのも、1.5(時間)でわるのも同じで、1時間あたりの道のりが出ます。
「135÷1.5」の計算も(筆算で)してみましょう。
同じく「時速90㎞」が求められました。
とりあえず、整数でわるときと同じように、小数(あるいは分数)でわっても、「1つあたりの量」が出ることを確認しておきましょう。
そこで「時速(1時間あたりに進む道のり)」は、次のように定義できます。
中学以降で時速の単位で〔km/時〕というものが出てきます。
これは分数の棒をななめにしたもので、もともとは「(時)分の(km)」の意味です。
分数は「(分子)÷(分母)」なので、「(km)÷(時)」の意味を表しており、単位そのものが「(道のり)÷(時間)」が(速さ)であることを示しています。
また、(時間)の部分が、・・・
〔時間〕だったら「時速」
〔分〕だったら(1分あたりの道のりを表しているので)「分速」
〔秒〕だったら(1秒あたりの道のりを表しているので)「秒速」 です。
次のように、まとめられます。
「18個のりんごを3人で分けたら、1人分は何個になりますか?」…という問題で、もとになる量(18個)を3(人)でわればいいように、1分あたり、1時間あたりの道のり(=速さ)を知りたければ、道のりを〔分〕や〔時間〕でわれば、求められます。
小数や分数でわる場合も、「18個のりんごを3人で分ける」と同じように考えればよいです。
とはいえ・・・
3のような整数でわる場合はわかるけど、1.5のような小数でわる場合、あるいは分数でわっても、「1つあたり」の大きさが出る・・・というのがピンとこない、という人も多いでしょう。
だいじょうぶです。それはそんなものです。
そのために小学校のカリキュラムで、少しずつ数の世界を広げ、理解できるようにがんばっているのです。
(注:その程度のもの何の苦労もなくわかる…という人もいるかもしれませんが、この解説記事はそう言う人たちに向けて書いていませんので、関係ありません。)
1つは、やはり計算力が大切でしょう。
自在に計算できることによって、感覚もつかみやすくなってきます。
多くの問題を経験することも大切ですし、理論的なことを知ることも大切です。
この両方は、相互に強め合うものです。
今回の解説記事では、その感覚を身に付けるきっかけ(ショートカット)になる得るように、わり算の意味についてもう少し考えてみます。
次のような問題を考えてみましょう。
これも答え自体はすぐに出ます。
30分で45㎞進むので60分(1時間)進んだときの道のり〔=時速〕は、45㎞の2倍で90㎞・・・「時速90㎞」です。
(この考え方が簡単ではない、という人もいるかもしれませんが、適切なトレーニングですぐに身に付けられる考え方です。少なくとも当塾では指導をしていて、ここで困ったことはあまりありません。)
これを、わり算の式にしてみましょう。30分は0.5時間なので・・・
「45÷0.5」・・・という式になります。
0.5は1/2のことですから、0.5でわるということは2をかけることと同じ(「÷0.5」=「×2」)というのは、小学6年生で、×分数、÷分数を学んだ後にはつかんでおきたい感覚です。
小学5年生でも、「速さ」の単元の前に、×小数、÷小数を勉強しますので、適切な文章題などで、0.5でわるということは2をかけることと同じなんだな~・・・と思えるきっかけはたくさんあります。(心配される方もいらっしゃるかもしれませんので言っておきますと、ここで思えなかったとしても何の問題もないですよ。その後に理解を深めるきっかけは、いくらでもあります。)
ここでは、そちらではなく、わり算のしくみからアプローチします。
わり算には、・・・
「〔わられる数(もとになる数)〕と〔わる数〕に、同じ数をかけても(同じ数でわっても)、商は変わらない」・・・という重要な性質がありました。
これは、算数の教科書でも、くり返し何度も扱われています。それほど重要な性質です。
冒頭の「135㎞を1.5時間」の問題でも、
「135÷1.5=135(×2)÷1.5(×2)=270÷3」のアプローチを紹介しました。
「45÷0.5」でも、わる数を簡単にするために、それぞれ「×2」してみましょう。
〔※「わる数(分母)を簡単にすることだけを考える」というのは、当塾でも頻繁に推奨している計算方針です。)
「45÷0.5=45(×2)÷0.5(×2)=90÷1」
90÷1は、もちろん「90」ですよね。
そうなのです。
わり算とは、「(わる数)を1としたとき、(わられる数)がいくつになるか?」をみる演算なのです。
(最近は、分数のわり算のところでこの考え方も紹介されているようですね。)
ということで、(わる数〔時間〕)が小数でも分数でもどんな数であれ、この数で(わられる数〔道のり」)をわれば、〔速さ〕が求められるということです。
「45㎞の道のりを30分で」というタイプの問題に、「45÷0.5」という式を書くことを批判する人らもいるようです。学習指導の現場にいない人からすると、くだらないように思えるのでしょうね。
ただ、上記のような考え方(理解)を進めるためにも、この式は大切ですね。
ここまでの内容でおわかりと思いますが、「45㎞の道のりを30分で」というタイプの問題で、当塾は基本、「30分で45㎞だから60分で90㎞」を確認した後、「45÷0.5の計算」で確認(もちろん上記のような内容を十分に身に付いている生徒さんには、わざわざ確認させませんよ。つまらないことにからんでくる人がいるので念のため…)、
あるいは逆に、「45÷0.5の計算」を自主的にする子には、計算で答えが出た後、「30分で45㎞だから…」という考え方を紹介しています。
どちらの解き方が正しいとかいうものではなく、どちらも相互にお互いの理解を強め合うものです。
「135÷1.5」や「45÷0.5」のような簡単な計算で、確かに1あたりの量が出てくることを実感する体験が必要です。それにより、より複雑な小数・分数、あるいは文字が出てきたときも、すんなり同じように考えられることにつながります。
最後に、もう1問、みてみましょう。
小学生のみなさんも、挑戦してみましょう。
いかがでしょうか?
「秒速(x÷t)m」が、答えですね。
小学5年で「わり算の商と分数」の単元を既習なら
「秒速x/t m」ともできます。(x/tは、分数を1行にまとめたもので「t分のx」のことです)