アクティブラーニングの時代の記述問題の重要ポイント(静岡県公立高校入試対策)
(主として記述問題の多い静岡県の公立高校入試を念頭に置いていますが、考え方としては全国共通で大切なことです。)
先日、おもしろい問題がSNSで話題になっていました。
国語の問題の誤答例があげられていて、それが、なぜ誤答といえるのか?・・・というものでした。
アクティブラーニングが重視される時代に、ひじょうに重要な示唆(しさ)に富んだものでしたので、ここで、とり上げます。
以下、その問題を紹介します。
文章自体は、いたって短いものなので、みなさんも考えてみましょう。(元記事を上げた方には、使用の許可をいただいております。)
【国語の問題:次の文章をもとにした(問題)に対する(誤答)について、どう思うか、ご意見を聞かせてください】
(文章) お父さんが新しいおもちゃを買いました。 それは真っ赤なブーブでした。 弟の次郎ちゃんは、真っ赤なブーブを運転して大はしゃぎです。
(問題) 次郎ちゃんはどうして大はしゃぎしましたか。
(誤答) 真っ赤なくるまを運転したから。
なぜ誤答なのかが、わかるか?
あるいは、誤答とは思えない…という意見でもいいです。
私の考えを言っておきますと・・・国語の採点基準は各学校の方針によるもので、唯一絶対の採点基準は存在しないというのが前提ですが・・・この誤答例は明らかに誤答です。
保護者様が、このブログをみている場合、お子さんにも、考えてもらってよいかとも思います。ものすごくよい思考力のトレーニングになりえます。
考えは、まとまりましたでしょうか?
それでは、はじめます。
まず、なぜ、まちがいなのかというと・・・
(うちの生徒が書いてみたいと、猛烈にアピールしてきたので、その生徒が書いたもので紹介します。)
(まちがっている理由):
真っ赤なブーブで遊んでいるのに
「運転していた」とかいてあるから。
(文章)中の「運転して」は、次郎ちゃんの心の中のことです。
「運転した気分になって、楽しんでいた」ということですね。
ところが、(誤答例)では、実際に運転したように書かれています。
わかりにくい、という人のために、もう少し、具体的にしましょう。
国語の採点基準は難しい面もありますが、1つめどにすると有効な方針がありまして、
それは、「解答だけをみて、何を言っているかわかるものにする」というものです。
その視点で、この(問題)と(誤答)を合わせた文章を考えてみます。
(参考文):真っ赤な車を運転したから、次郎ちゃんは大はしゃぎした。
最初の(文章)を読んでいない人の気持ちになって、考えてみましょう。
何を言っているのかは、わかりますが、逆に誤ったメッセージになっていますね。
この(参考文)をみた、ほとんどの人は、次郎ちゃんが本当に赤い車を運転したと思うでしょう。
ところが、実際はそうではないです。
次郎ちゃんは、車のおもちゃで遊んでいただけです。
それを読んだ人に、「次郎ちゃんが、車を運転した」という、誤った情報を与えることになってしまいました。
これは、解答者がもとの(文章)を読んで、次郎ちゃんが車を運転したと、誤読したと、とられても文句は言えません。
結果としては、同じことですからね。
とはいえ、なぜ誤答かわからなかったとしても、そんなに気にしないでくださいね。ほとんどの人が、最初はそんなものです。
こういう考え方も必要だよ・・・ということを紹介するために、この記事を書いています。
・・・ということで、もう少し、補足しておきましょう。
国語だけではありません。理科や社会の記述問題でも同じです。
(あるいは、記述問題だけでなく、選択問題でも基盤になる考え方ですが…)
記述問題対策で大切なことは、コミュニケーション能力です。
「伝言ゲーム」のようなものを、イメージするとよいでしょう。
国語なら文章、理科なら問題に示されている実験の結果、社会なら与えられている各種資料など
・・・これらの内容を、解答者が正しく読み取り(①の矢印)・・・
その内容を第三者に正確に伝える(②の矢印…この場合の第三者というのは、単に採点者ではなく、世間一般、さらには全世界くらいに考えるべきでしょう…)
・・・これが、テストでの解答のつくり方です。
数学の証明のようなものです。
今までも、そうだったのですが、アクティブラーニングが重視される中、公立高校入試など公のテストでも、それを反映して、こういう面が強くなってきました。
(選択問題なら、そうなっている選択肢を選べばよいです。)
誤答例では、文章の内容を正しく第三者に伝えられていません。だから、誤答です。
もとの(文章)を読んだあなた(解答者)にとって、「次郎ちゃんは、車のおもちゃで『遊んで』いた」・・・というのは、あたりまえですが、他の人にとっては、あたりまえではありません。
このように、自分ではあたりまえのことでも、他の人にとってはそうでもないかもしれない・・・こういう視点は、テストだけでなく、いろいろな場面で必要ですね。
また、自分の考えていることを、できるだけわかりやすく伝えよう…とするのも大切なことです。
友だちや家族なら、くわしく説明しなくても、ふだんの言動から理解してもらえることも多いですが、これから先、中学生のみなさんの世界は、さらに広がっていきます。より多くの人と、接する機会が増えます。
中学生の多感な時期、しかも高校受験というテンションの上がる時期に、受験勉強を通して、こういうところについて考える機会が与えられるのは、とても素敵なことですね。
くり返しますが、これが、なぜ誤答なのか気づけなかったとしても、何も恥ずかしくはありません。
これを教訓とすればいいでしょう。
気づけなかったとして、なぜ気づけなかったかを分析することは有効です。
わかりますよね?
私たちは、つい、上の図でいうと(①の矢印):問題の内容を読みとることばかりに集中してしまうからです。
(②の矢印)については、忘れがちです。しかし、むしろこちらの矢印の方が重要です。
(②の矢印):自分の考えを他者に正確に伝えるという視点を、今後はもっと意識しましょう。
これは何も、今までよりたいへんなことをやれ・・・と言っているわけでは、ありません。
逆に(②の矢印)を重視することで、(①の矢印)がよりスムーズにみえてくることは、よくあります。
ぜひ、それを実感してみましょう。
数学(算数)なんかも、同じですよ。ただ、答えを出せばよいというものではありません。
〔求め方〕の指定があって、どのように計算したか(考えたか)を入れるのは、第三者にその答えが正しいことを説明する、という意味があります。
正答例(模範解答)
(まちがっている理由)だけで、正答例を入れるのを忘れていました。
その前に、最初に入れた(まちがっている理由)ですが、ちょっとたどたどしいと思いませんでしたか?
それもそのはずで、あれを書いたのは小学3年生です。
この問題を、うちの塾でも試してみましたが、そこそこ成績上位の高校生も理由がわかるのに時間がかかりましたが、おもしろいことに、一番すぐにわかったのは小学3年生の男の子たちでした。
「すぐ」・・・どころか、あの(誤答例)をみた瞬間に大爆笑でした。
(私も、最初に(誤答)をみたときは、クスッと笑いました。)
これは彼らが特別に頭がいい、というわけではなく、よぶんなファクターがないからこそでしょう。
(まぁ、なんせ小学3年生の男の子ですから・・・自分らは、もう「ブーブ」なんて言わないぞ、とか、おもちゃの車で遊んで、運転している気分に何かならないぞ・・・とかいうのが、最初にくるからでしょう。)
そんな彼らの書いた正答例が、これまたすばらしいものだったので、それを紹介しておきます。
(正答例):
真っ赤なブーブを買ってもらって
うれしかったから。
本当に、私が何か誘導したなんてことはないですよ。でも、みごとな解答です。
なお、私が考えた正答例は、こちらです。
(正答例):
新しいおもちゃで遊んで、楽しかったから。
なお、この問題の出題者は(私じゃないですよ)、「ブーブを運転して楽しかったから」も、模範解答として設定していました。
なるほどで、・・・ブーブという幼児語を使うことで次郎ちゃんが幼児であることが伝わり、それにより「運転して」も実際に運転したわけではないということが、わかるので可、ということでしょう。
私はこの答えでは今一つな気がしますが、こういうのは各高校の採点担当の先生方が、学校の方針に合わせて(…というか、ぶっちゃけ集まる生徒のレベルに合わせて)、議論を重ね採点基準を固めていくものなので、ここから先は、何も言えません。
あっ、高校ごとに採点基準がちがうというと、「それはたいへんだ、それに合わせて対策しなきゃ」と思われる方がいるかもしれませんが、そんなことはないですからね。
どのレベルだったとしても、よりよい解答づくりをめざせばいいだけの話です。
もう1つ論点が、あります
模範解答の、「うれしかった」や「楽しかった」が、気になった人も多いでしょう。
もちろん、こういう記述も必要です。
簡単にいえば、「新しいおもちゃで遊んだ」からといっても、「楽しかった」とは限らないということです。
もしかすると、「つまらなかった」かもしれません。
解答では、
「新しいおもちゃで遊んだ」『ので』 → 「 ? 」『から』 → 「大はしゃぎした」
・・・の「 ? 」の部分を、(一般的な常識に照らし合わせて)補うことが求められます。
このあたりのことは、記述問題の書き方の秘訣(ひけつ)ということで、別ブログにまとめております。
そもそも、どういうふうに考えて、解答をつくっていけばよいかということを、解説しております。
こちらもみておきましょう。
以上です。
ご意見・ご感想、お待ちしております。